それは突然の電話だった。 伝えられなかったこのコトバは どこに行くのだろうか? 『もっしも〜し♪ ちゃん?』 お姉ちゃんの同級生でわたしが密かに憧れていた先輩。 彼からの電話は突然だった。 『エイジ先輩?やけにハイテンションですね。』 『え?そう?やっぱわかる?』 『なにかイイことでもあったんですか?』 『えっへへ〜☆なんだと思う?』 『?なんですか?』 聞きたくなかった意外な一言だった。 『実はさ、 ちゃんには一番に報告しようと思って』 『はい。なんですか?』 『俺さー、 ちゃんのお兄さんになるかも♪』 『・・・は?』 『実は俺、お前の姉ちゃんと付き合うことになったんだv』 わたしはエイジ先輩の気持ちを知ってて、二人を応援してた。 はずなのに・・・ このとき初めて わたしは自分の気持ちに気がついたのだった。 『…お、おめでとうございますぅ!!先輩良かったですね♪お姉ちゃんの事よろしくッス!』 『えへへ、サンキュー。』 『あ、わたしこれから用事あるんで失礼します。』 ピッ。 無性に心に穴が空いたような気分。 気がついたら わたしは走りだしていた。 いくら走っても気が晴れなくて。 一時間くらい走っただろうか? ふとテニスのボールを打つ音が聞こえて わたしは無意識に足を止めた。 「危ない!そこのひと!どいて、どいて!」 「へっ?」 ゴーンッ!! テニスコートの脇を歩いていたせいか、はたまたあまりに不幸な星のもとにいるのか、 は突然の言葉にとっさに反応出来ず、後頭部でその物体を受けてしまった。 「っっ痛!!」 の頭をかすめた黄色い物体は地面に転がると停止した。 (…テニスボール?) 触れてみるとソレは硬式用のテニスボールであった。 「わりぃ。わりぃ。だから避けてって言ったじゃん。」 「…よけられるわけないだろうが!!」 は涙目になりながらも必死で叫んだ。 学校ではクールビューティな女子で通っている容姿が台無しである。 さすがに女の子を泣かせてしまったのがすまないと思ったのか すまなそうな顔をした。 「ほんとゴメン、ゴメン。じゃあおわびに付き合うからさ。」 「なにに?」 「え?嫌だなぁ。"付き合う"って言ったら"男と女が交際すること"に決まってるじゃん。」 「は?」 は一瞬何を言われてるかわからなかった。 だから頭の中真っ白で考えるより先に言葉がでてしまった。 「なんで見ず知らずの人と付き合わなきゃならな...そういえばあんただれ?!」 すると彼はまってましたとばかりに嬉しそうに名乗った。 「俺っスか?俺は立海大付属テニス部エース噂の切原赤也っス。で、お嬢ちゃんは?」 「わ、わたしっスか?青春学園1年2組 っス!」 ついつい赤也のノリに乗せられて は同じ調子で自己紹介をした。 「へぇ。 ちゃんね。1年って事は俺より年下か。」 「えぇっ!せ、先輩?!」 赤也があまりに無茶苦茶で無邪気なため勝手に同じ年か年下と決め込んでいた は ビックリして固まった。 そうしている間にも赤也は話を勝手に進めている。 「じゃあ ちゃん。付き合うって事で決定ね。俺の事は赤也でいいから。」 「と、年上を呼び捨てにするのはどうかと」 「えー。そんなの気にしなくていいじゃん。付き合うんだから関係ないって。」 (これ以上付き合ってられるか..。) 「わたしもう帰ります!失礼しますっ!」 はあきれ顔で赤也をみると、とっとと帰ろうとした。 すると赤也は自分に背中を向けた の身体を自分の右腕で抱きよせた。 「まぁ、待ちなって。 ちゃん彼氏いるわけ?」 「別にいませんけど。」 「じゃあ好きな人がいるんだ。」 (好きな人..) 今一番人につつかれたくない所を赤也に言われて はうつむいた。 「..ついさっき告白する前に振られました...。」 それはまだ誰にも打ち明けた事のない言葉で。 でも確かにそこにあった気持ちで。 今までココロの中に押し殺していた言葉だった。 「..奪っちゃえば?」 「えっ?」 耳元に意外な言葉が落とされた。 は思わずふり返って赤也をみた。 まるで悪戯を企む小悪魔のように彼は言葉を続けた。 「俺が奪い返してやろうか?」 どこまでが本気でどこからが冗談かさっぱりわからない。 でも...。 「ありがとう。でもいいんです。わたしは姉といるエイジ先輩が一番好きだから。」 は赤也の目をしっかりみつめるとやんわりと笑った。 「..赤也くんありがとう。」 は少し照れた顔で小さくつぶやいた。 赤也は一瞬驚いたような顔をしたが小さくふっと笑うと の後頭部にそっと手のひらをあてた。 「 ちゃん。やっぱ俺と付き合わない?」 「..なんで?」 さっきとはちがい少し落ち着いた調子で は聞いた? 「俺ら逢って数分話しただけだけどさ、フィーリング合いそうな気がしたから。」 「なにそれ??」 「まぁまぁ。ひとまずお試し期間ってコトで。俺と一週間付き合ってみない?どうッスかねぇ?」 そう言ってニッコリと笑った笑顔があまりに可愛くて。 それまでのどんな顔とも違って。 は不覚にもこの笑顔をもっとみたいと思ってしまった。 「..うん、わかった。」 半無意識に発せられた言葉はもしかしたら本心だったのかもしれない。 「マジっ?じゃあ ちゃんヨロシクっ。」 「はいよ。じゃあね、赤也くん」 どうせ一週間じゃもう会わないだろうという気持ちもあった。 だから は自分がいかに甘かったかというコトを思い知らされるのだった。 第二話へ この話、克己と慎々さんと合同制作している『超身内的参六夢』の番外編。 (菊丸ヒロインの妹が赤也ヒロインと考えていただければいいのかにゃ?) まだまだ続く。 2004年4月20日 克己 |