「……。」

その日、同級生の芥川慈郎は教室に入ってくるなり、 の顔をマジマジとみつめてきた。

なに?なんなの??
あまりにも真剣な顔でみつめられて が顔をかぁっと赤く染め上げると、ジローは納得した表情で笑った。





「あぁ…やっぱり、オメェかぁ。」

「え?」



 運命のヒト



私がなんだというのだろう?
落し物でもしたのを拾ってくれたとでもいうのだろうか?
がジローの謎めいた言葉に頭を悩ませていると、ジローはすぅっと自分の席に着き、机に顔をうずめた。



「ちょ、ちょっと芥川っ!!私がなんなのさ?!」

「…zZZ」

「おいっ!!意味深な言葉残して寝るなぁっ!!!!!」

「…ん……ぁんだよ…ヒトが気持ちよく寝てるってのに…起こすな…よ…zZZ…」


一向に起きる気配のないジローを は悔しそうに眺めた。
どういう意味なのだろうか?

同じクラスといえど、ジローと は仲が良いワケでもない。
話をしたのだって、今のを入れても指折り数える程度。

いくら考えても、二人の接点が浮かばない は、気が付くと小春日和のぽかぽかとした陽気に眠らされていた。







『…マジマジ?すっげぇー!!』

『だからって…』

アレ?
あそこで話してるのは、わたしと…芥川?
どうやらここは の夢の中で、 は空から、 とジローのやり取りを眺めているようだった。



『…なんだよ。 はちげーの?』

『そりゃ…私も……けど…』



なんの話してるのかなぁ?
そう思った矢先、にわか信じられない展開が目の前で行われた。
それは…

『…だから言ったろ。オレと は…』


その言葉と共に、ジローは に顔を近づけて…

キ、キスされたぁっ?!!!

そう。
夢の中の は、夢の中のジローとキスをしてしまっていた。


『…ん…んん……』


しかも濃厚っ!!!!!
あ、あれって、ディープ…キスだよね///
って…そ、それ以上しちゃ駄目っ!!!!!!
あ、うぅ…。
バカバカバカっ!!芥川のスケベっ!!!

なんでっ?!!これ一体どーゆー事なのっ!!!!!!!!!!


















「…こら!!芥川、いい加減起きろっ!!!」

「…zZZ」

放課後になっても、いまだ眠り続けるジローを は叩き起こそうと揺すった。

「お前のおかげで、コッチは夢見最悪なんだぞっ!!!」

「…zZZZ」

「勝手に私の夢に出てきて…あんな事…しやがって…//」

「…ん…あ?…え?マジ?…オメェも俺が夢に出てきたのか?!!」

そのとたん、それまで熟睡していたジローは、突然パッと起き上がるとお目々パッチリで飛び起きた。

「だから!!夢に出てきてあんな勝手な事…」

「やっべ〜!!かっちょA!!あれって予知夢なんだなっ!!」

「予…知夢?」

がきょとんとした顔で、ジローを見返すと、ジローは最高の笑顔で笑った。
その笑顔に は真冬だというのに、身体がポッと熱くなるのを感じた。


「なー、なー、夢の中でした事やっていいか?」

「へ?」



そ、それって…。
はさっきよりも一層顔を真っ赤にさせながら後ずさった。
そんな様子を気にせず、ジローは に近づいてくる。


「えっと…芥川…くん?ちょ、ちょいまち…」


やがて、教室の壁まで追い込まれて、 は床にへたり込んだ。
いやいや。いくらなんでもヤバイって!!
ココ教室だし!!
が顔を下に向けてぐっと目を瞑ると、左腕をグッと持ち上げられ、ジローの腕とクロスさせられた。


え?


「変身っ!!!学園戦隊氷帝レンジャーっ!!」

「…?」

「…ちぇ。やっぱー無理か。」

「芥川?」

「俺達、学園戦隊氷帝レンジャーで悪の組織サカキータと戦うんだぜ。」

「…あ…なぁ〜んだ…//」

が脱力して壁に寄りかかると、ようやくジローは が赤い顔している事に気が付いた。

「あぁ〜あ、オメェやらC−。なんか違うこと想像したんだろー。」

「ち、違うもんっ!!」

「じゃあ言ってみろよー。どんな夢だったんだ?」

「あ、芥川がぁ…」

「俺が…?」

「芥川のスケベーっ!!!!」

「俺がやらC−?」

「そーだよ!!芥川が意味深な顔であんなコト言ったからあんな夢みたんだ!!断じて私のせいじゃないもん。」

がそう叫ぶと、ジローは困ったように頭を掻いた。

「…あぁ、バレちまったか。俺のキモチ。」

「え?」

唇に温かい感触がした。
今のって…。

「俺、 の夢に俺が出てきたのは運命だと思うぜー。だって、俺の事意識したから夢にでたんだろ?」


そ、それは…そうかもしれない。


「ま、みてなって。氷帝戦隊もぜってぇ予知夢だからな。」

「それはない!!絶対ないって。」

「じゃあ、アレが予知夢だったら俺達運命だって信じてくれよー!」


そう言ってジローは笑った。
運命とか予知夢とかそういう事をさらっと言ってしまうジローはちょっとカッコ良いと思った。













それから数ヶ月後…
氷帝の文化祭直前のある日。


「芥川、芥川ってば。…クラスの出し物が…『学園戦隊…氷帝レンジャー』…だって。芥川がレッドだって…」

それまで中庭で眠り呆けていたジローは飛び起きると の肩を揺らした。

「…ひょうてい…れんじゃぁ?…え!!マジマジ?すっげぇー!!」

「だからってアレが予知夢だったとは思えないんだけど。」


「…なんだよ。 はちげーの?」

「そりゃ…私も…ピンク…なんだけど…」


いくらなんでもねぇ…。

「だから言ったろ。オレと は『学園戦隊氷帝レンジャー』だって。」

「で、でもさー。文化祭の出しモノであって…」

「あぁ!!もぅ!!ぜってーこれは運命っ!!」


そういうとジローは私を無理矢理引き寄せて、強引に唇を奪った。


「…ん…んん……」


あれ?これって前にどこかで??
…あぁあっ!!!!!!!!

この後の展開を思い出した私は、唇が離れるとジローの腕から逃れようとした。


運命も予知夢も信じるから、今日この場だけは予知夢にしないでっ!!
は心の底からそう叫んだのであった。












いつも眠っている彼ならば、予知夢も見そうだと思う、今日この頃。

2005年02月09日  克己