「笹の葉さ〜らさら…」 七夕の早朝テニスコートに丸井ブン太と、 の歌声が響いていた。 「今日って七夕だよな。」 ブン太が呟くと はにっこりと笑ってうなずく。 「そうだよ。七夕にはあのウタを歌わなきゃねー。」 二人は立海テニス部のレギュラーであるが、仲が良いため朝練の休憩中に ふとこんな会話をしているのであった。 「笹の葉さ〜らさら〜♪ じゃ〜かる つ〜るつる」 「お〜星さ〜まキラキラ あ〜た〜ま〜は 光る〜♪」 「…って丸井っ! っ!!なんじゃその歌はっ!!!!」 二人のさり気ない合唱に、案の定ジャッカルは突っ込みを入れる。 「あ〜、やっぱジャッカルの突っ込みがあってこそ朝って感じするよな。」 「えぇ!!駄目?ジャッカルの良さを日本の文化におりまぜた素晴らしい歌なのに!!」 「どこが良さだっ!!俺の頭の事しか歌ってねぇじゃねぇかっ!!」 ジャッカルが凄い剣幕で怒鳴るので、 は少し首をひねってしばし考えこんだ。 「じゃあ…二番いきま〜す!!」 「あ、俺も歌うぜぃ!」 はブン太に歌詞を耳打ちすると 二人は再び合唱を始めた。 「あ〜たまのラクガキ 私が書〜いた♪ マ〜ジックで書いたのに ジャ〜ッカル気づかない♪」 「な、何ぃぃxxxx!!!!マジかよっ!!」 「へぇ〜。 マジなのか?」 ジャッカルだけでなくブン太も不思議そうな顔で をみた。 は平然とした顔で二人を見返すとにやりと笑った。 「書いたよ。手頃な短冊がなかったから寝てるジャッカルの頭に。」 「な、何だと?!!!」 「だって、背高いから、願いがより空に近い位置になってかないやすいかと(笑)」 「お、お前、何書いたんだ?!」 「『ジャッカルが私の事愛してくれますよーに』って。」 「んな不吉な願い書くんじゃねー!!」 ジャッカルがそう叫ぶと、ブン太がマジック片手にジャッカルの背中によじ登っていた。 「ま、丸井?お、お前までなにすんだ?!!」 「ん〜、そんな不吉な願い消して『 が丸井ブン太の事スキになりますよーに』って書こうと思っ て。」 「お、お前らいい加減にしろ!!!俺は短冊じゃねぇーっ!!!!!」 ジャッカルはいつも通り、血管が切れんばかりに叫ぶが とブン太は相変わらずマイペースに対応した。 「あ、確かに短冊にしては丸すぎだよね。」 「色も茶色すぎだよなー。失敗失敗。」 「そう思うんだったら初めから書くなっ!!!!!!!!…ゲホッ。ハァハァ。」 もはや『四つの肺をもつ男』も叫びすぎでぜぃぜぃと荒い呼吸になっている。 「…というのは冗談で、ホントは今日が七夕なんだよって事をジャッカルに教えたかっただけな の!」 「ジャッカル鈍そーだからこうでもしなきゃわかんなそうだもんな。」 「…なんじゃ…ぜぃ…そりゃ…ハァ…」 「つーか、ジャッカルってば『七夕』って知ってんのかよ?お前、知らなそーだよな。」 「ジャッカル…七夕っていうのは日本の伝統行事で、年に一回織姫と彦ぼ…」 「それぐらい知ってるわっ!!何度も言わすな!俺は日本人だっつーの!!!」 すると とブン太は顔を見合わせ、嬉しそうに笑った。 「な、なんだよ。気色悪りぃなーっ。」 後ずさるジャッカルをよそに、二人は言葉を続けた。 「実は、今夜三人で七夕しよーと思って。どうかな?」 「へ?」 「たまにはテニスの事忘れて三人で遊ぶのもいーだろぃ☆」 「は?」 「じゃあ、18時に土手集合って事で。各自短冊は持参ね。」 「その後、七夕祭り行こうな。」 「あ、お、おい!二人とも勝手に決めんな!!」 「じゃ、私はそろそろ練習戻るよ。」 「おぅ! 頑張れよ!!」 「うん、ジャッカルとブン太も頑張ってねー。」 そう叫びながら走り去っていく 。 「―……。」 「何?嫌なのか?ジャッカル?」 別に嫌なんかじゃない。 本当はこいつらとつるんでるの結構スキだし。 もっとも、そーゆーのを口に出来るほど 俺は素直じゃないんだが。 「しゃーねーな。参加してやるよ。」 なんかこういう三人の関係もしばらくはいいかな。 そう思った。 そして俺の今年の願い事は… 『とりあえず二人に負けねーよーに。』 「あ、今日七夕だ。」と思ったら一気に書いてしまったお話。 2004年7月8日 克己 |