「ブン太先輩ってチューインガム好きッスよね。」


突然、なんの脈絡もなく赤也がそんな事を言い出した。
ブン太は一瞬とまどったがいつもの調子で答える。


「好きだけど、だから?」

「いやぁ、よく真田副部長に怒られても平気でコート内でも噛んでるなぁって思っただけッスよ。」

「目印…だかんな。あと願掛けみたいなもん。」

「目印…ッスか?」

ブン太は小さくため息をつくとコートのベンチに座った。



「小学校2年の時、近所に仲のいい女の子がいたんだよ。」

「?」

「彼女はよく『グリーンアップル』の20円のチュ−インガム噛んでたんよな。」

「はぁ?20円のって…駄菓子屋によく売ってるアレッスか?」

「そ。で、彼女は父親の転勤で隣町に引っ越す事になったわけ。」

「よくある話ッスね。」

「…引越しの日が俺の誕生日で、
アイツわざわざ「誕生日おめでとう」って言いにうちに寄ってくれてさ。」

そういうとブン太はポケットからチュ−イングガムを取り出し眺めた。

「そのとき「コレ私が一番好きなモノだから…一番好きなブン太くんにあげる…忘れないでね。」
ってくれたんだ。」

そういいながらブン太はうつむいた。


「だから…俺の事、アイツがみつけれるよーに…。」

「…。」

「…赤也?」

「…先輩にそんな過去があったなんてっ!!そのコ早くみつかるといいッスねっ!!」

「は?もういるけど。」

ブン太は赤也に水を差すように答えた。

「へ?」

その時タイミングよくフェンス越しに女の子が大きくてを振って叫んだ。
女の子は元気いっぱいに走ってくると勢いよく背中からブン太に抱きついた。

「ブン太ぁ〜!!練習終わった〜?」

「うわさをすれば影。」

「えぇぇっ!!思い出のコって 先輩なんッスかぁ?!!だいぶ話のイメージと違うッスよ!!」

「昔はおしとやか清楚可憐だったんだぜ。なのに…こんなになっちまって」

「え?なに?なんの話?」

「…知らぬが仏ッスね。」

「赤也っ!あんた達、私の悪口言ってたんでしょ!殴るよ!」

「わぁ!殴るの勘弁ッスよ!じゃお疲れ様〜。」

そういうが早いが赤也はダッシュでその場を逃げ出した。

「なんかあったのかよ?」

赤也がいなくなるとブン太は に話しかけた。

「えへへ。渡すモノがあって。」

「渡すモノ?」

ブン太が不思議そうな顔で を見ると はブン太の肩ごしに手のひらの上に
なにかを握らせた。

「…これって…。」

「今年の分。」

そういうと はにっこりと微笑んだ。


「アレ?今日ってもしかして俺の誕生日かよ?」

「その通り☆ブン太、お誕生日おめでとう。」

「…また今年もこれだけぇ?」

「なに言ってんの。ブン太もソレ好きでしょ?」

「いや、好きだけど。毎年進歩ないっていうのも寂しいじゃん。」

ブン太がそういうと受け取ったガムの包み紙を開いた。

「あ。『アタリ』だ。じゃあオマケ貰うね。」

「おまけ?」

が不思議な顔をしてブン太を見下ろす。







すると










ブン太は の後頭部に軽く手を添えて自分に引き寄せた。











二人の唇が重なり













しばし時が止まったように思えた。











「な?!」

は真っ赤になってブン太をみた。

「だって『アタリ』が出たらもう一個だろ?」

「ブ、ブン太?!」

「ごちそうさま☆」









ブン太の初夢にして誕生日ネタ★最初からキス魔だ。
 2004年4月20日          克己