「もったいなー。捨てるなら俺にちょーだい。」









世間では幸せなバレンタインデー。
でも私にとっては最悪な夜。

あまりに哀しくて
私は泣きそうになりながらも泣いちゃいけないと思い、必死で涙を堪えていました。


そしてあの人にあげようと思っていたチョコを橋のうえから捨てようとしていました。


そんなとき背後から声がしたのです。
振り替えると同じ年くらいの男の子が話しかけてました。






「…食べたいの?」

「うん♪俺、部活がえりでお腹ペコペコでさー。それにそのチョコすっごい旨そうv」

「…いいよ。私の手作りだからおいしくないかもしれないケド。」



男の子は私のすぐ横の橋の手摺りに座りました。


「アレ?もしかしてこれ手作り?!カワイイー♪」


目をキラキラさせながら男の子は私の作ったチョコを眺めていました。
そしてホントに美味しそうに私が作ったチョコをひとつずつ食べてくれました。


「美味v」

「ありがと。気合いいれて作ったんだ。彼の要望でね。」

「…!」


私は思わず不自然なほど哀しい微笑をしてしまいました。


「…それって俺が食べちゃって良かったの?」


そんな私の様子をみてか
男の子は私のことばにビックリしたようで遠慮気味に聞いてきました。


「うん。もう必要ない代物だもの。だからむしろ食べてくれたほうが嬉しいな。」


私はまた泣きそうになりましたが、必死で涙を堪えました。
ここで泣くのはなんだかいけない気がしたのです。





「ありがとねんvごちそうさま♪」

「いえいえ。おそまつさま。」


男の子はチョコをあらかた食べおわるとにっこりと微笑みました。
その笑顔をみているとふと心が軽くなりました。

私はなんだか男の子がチョコを食べてくれたコトで
少しだけ胸の痛みが和らいだ気がしたのです。













「ありがとう。」

無意識に私の口からそのことばが発せられました。
男の子はまたにぃと笑うと私の頭をポンと叩きました。


「まだちゃんと泣いてないっしょ?」

「!」

私はその言葉にひどく動揺しました。
だって彼の言うとおり
私は現実を直視出来なくてまだ泣いていないのです。












「泣きたいときは素直に泣かなきゃー。じゃないとちゃんと笑えないじゃん☆」

「え?」

「俺、ちゃんと笑った顔みたいにゃー。」

「…。」

「なんなら俺の胸で良かったら貸すけど♪にゃーんてね。」










男の子がそういってくれたためか
私は気が付くとポロボロと泣いていました。


気が付くと男の子胸にしがみついて必死で泣いていました。


男の子は何も言わずにただ黙って私が泣き続けるのに付き合ってくれました。

























「…あのね。」

「ん?」

「泣きまくってごめんね。」


私はそう言ってうつむました。
すると男の子はいきなり両手で私の頬をむにっとつまんだのです。




「謝るなら笑えよ。さっき言ったろー。俺は笑った顔がみたいの☆」




そう言ってむっとする顔をみていたら思わず私は笑みをこぼしてしまいました。
私達はそこでお互いの顔を合わせて笑いまくってしまいました。
























「ねーねー。3月14日に逢ってもいい?」

「え?」

「だって、あれ一応本命チョコだったんだろ?
俺食べちゃったからホワイトデーにお返ししたいんだよねー。」

「うん、わかった。ホワイトデーのこの時間にここで待ってるよ。」

「ありがとー!俺、料理得意だから期待しててねん♪」


そういうと男の子は手摺りからぴょんと器用に飛び降りました。
帰ろうとした男の子を見送ろうとしましたが

私はふとあるコトに気が付いて彼を呼び止めました。













「名前なんていうの?」

「俺?俺は菊丸英二だよん♪そっちこそ名前は?」

「私は 。」

ちゃんだね。了解〜☆」




そういうと英二は私の耳元まで寄ってきて小声でこういいました。





ちゃん。今度は他の誰か用じゃなくて、俺のためにお菓子作ってきてほしいなv」

「へ?」




私がふい英二のほうをみた瞬間、英二は私のほっぺたに小さくキスすると






「ちゅっちゅっちゅっちゅっアニマルちゅっちゅv」




と言いながらにこやかに走りさって行きました。



「こ、こらぁ!//」






今、私の心に春一番が吹いた模様です。













またも中途半端な終わりかた?彼女を振った人はいかに?

2004年2月5日             克己