|
出会いは偶然 恋に落ちるのは一瞬 昔誰かが言ってたけど その言葉は本当だと改めて思う。 「悪い、大石。俺ボールとってくるよ〜。」 「あぁ。英二頼む。」 アップで軽く大石とラリーしていたボールがたまたまフェンスを越えて どこかに飛んでいってしまった。 仕方ないから俺はボールを探しに行くことにした。 「えっと、たしかこのあたりだったんだけど…」 ボールはフェンスを越えて校舎のほうに転がっていったらしい。 校舎の窓越しに花壇があってそこに落ちていそうな予感がしたから 俺は花壇の横を調べ始めた。 「う〜ん、にゃいなぁ?」 途方にくれて困っていたときだった。 小さく 楽器の音が聞こえた。 「ん?」 聞いたことのある音色。 ピアノのようだけど もっと電子音のようで キーボードのようだけど もっと深みのある和音。 聞いたことのない旋律だけど 暖かみがあって 気が付くと 俺は音のするほうに歩いていた。 「この部屋から?」 音色のした部屋(教室)の窓を覗くと オンナノコがひとり、なにかの楽器を演奏していた。 ピアノのような鍵盤楽器で なぜか鍵盤は二段になっている。 しかも、足元にはなぜか『大きなピアノの鍵盤のようなモノ』がある。 (不思議な楽器…。) それが俺のこの楽器への第一印象だった。 彼女はその楽器を左右両手と左足を使って器用に演奏してる。 ちょっと小柄で、足の鍵盤に足が届くのがやっとという感じだったけど すごく楽しそうに演奏していたんだ。 そんな彼女をみていると なんだかみているコッチが楽しくなってきた。 だからおもわず 「綺麗な曲、すごいにゃ〜。」 なんてつぶやいてしまった。 「!」 楽器の音に埋もれるくらい小さな声だったのに 彼女は手を止めてゆっくりとこっちを振り返った。 「あ…」 彼女はビックリした表情でコッチをみた。 どうやら俺がココにいたことにはまったく気が付いていなかったようだ。 だが、実はこのとき俺のほうもビックリした。 だって彼女は… (同じクラスの さんだ…) 「… さん?」 さんは今年転校してきた編入生だ。 たまたま同じクラスになった子で たしか不二と同じ委員会。 (何委員だっけ??) 今まで話した言葉は「おはよう」くらい。 顔は同じクラスだから何度も見てるけど。 もちろん二人っきり話したことは一度もない。 どちらかというとおとなしいイメージだ。 正直とっつきにくいイメージだった。 だからいくら俺が、人見知りしないほうだって言っても 彼女に話しかけたのは自分でも意外だった。 でも 彼女の曲を聴いて話しかけずにはいられなかったんだ。 さんは一瞬、ビックリしたまま事態を把握していなかったようだけど 急にハッ!として顔を赤らめた。 「…こ、コンニチワ//え、えっと菊丸君…でしたっけ?」 俺が話しかけると彼女は顔中真っ赤にして、それでもペコリとおじぎしてあいさつしてくれた。 (なんか…可愛いいかも//) その仕草が可愛いくて 思わず俺はその瞬間彼女に好感をもってしまった。 「そうだよ。 さんは何ちゃん?」 「え?えと?」 「下の名前v」 「あ、あの、はい、 です。」 「わぁ!イイ名前だね☆」 「え、あ、ありがとうございます/// き、菊丸くんはなにしてたのですか?」 「ん?部長くるまでラリーやってただけだから気にしなくてだいじょうぶい♪」 「ほ、本当に大丈夫なんですか?」 「うん、平気平気ー♪だって手塚、生徒会の会議中だしさー。 それより、クラスメイトなんだから敬語使わなくていいよ。 呼び方も菊丸くんじゃ固いし。もっとフレンドリーでいいって☆」 「で、ではなんとお呼びすれば?(わたわた)」 「英二でいいよ。俺も ちゃんて呼ぶからさ。」 「わかりました。英二くんよろしくね(にこ)」 「ところでさっ、それってピアノ?キーボード?」 と俺は彼女が座ってる目の前の楽器を指さした。 「ピ、ピアノじゃなくて、エレクトーンっていう楽器だよ。」 「えれくとーん?」 「はい。」 耳慣れない楽器の名前に俺はちょっぴりとまどったけど、 なんか、同時にその楽器と ちゃんがとても気に入ってしまった。 「なんか不思議な楽器だよねー。」 「不思議?かなぁ?」 「うん!不思議だよ!だって、まるで足で弾くピアノ付きピアノでさ、 なんかアクロバットなピアノってかんじー☆」 「…!! あはは 菊丸君っておもしろいね あはははは 」 ちゃんがあんまり笑うから俺もつられて笑ってしまった。 「あ、ねえねえ、さっきの曲もう一回弾いてよ〜♪」 「あれですか?!」 「うん。あれv」 リクエストされて ちゃんは照れながらも まんざらでもないようすでさっきの曲を弾いてくれた。 旋律がとっても綺麗で それなのにどこか子供っぽい音。 大人と子供の狭間のような印象の曲だ。 アップテンポで軽快なのに 音のひとつひとつを大切にしているのが伝わってくる。 (やっぱりイイ曲v) 弾き終わると ちゃんは恥ずかしそうに笑った。 「どうかな?」 「この曲なんて曲なの?」 「あ、これオリジナルなの。」 「えぇっっ!!!これ ちゃんのオリジナルなの?!すご〜いっ!!!」 「す、すごくないよ。まだまだです。」 「でもイイ曲だったけどなぁー。」 「ホント?」 「うん♪」 「あのね、わたしの夢、私の演奏でCDだすんだ。 世の中の誰かひとりでもこの曲好きっていってくれたら幸せだから。 自分の曲で誰かが幸せになって、自分も幸せになったら素敵だから」 「へぇー!じゃあ ちゃんは幸せだね☆俺、 ちゃんの曲聞いて幸せになったから」 「え?」 「俺、ファン一号!よろしくー♪」 と言って俺は思わず彼女にぎゅーって抱きついた。 「あわわ。ちょ、ちょっと何するんですか!? 」 「ん?気にしにゃい、気にしにゃい♪これは俺なりの愛情表現だしー。」 ゆうちゃんはうつむいてしたを向いてしまったけどその顔は林檎のように真っ赤だった。 「それとも… ちゃん俺の事キライ?」 「そ、そんな事ないですけど…」 「ならいいじゃん♪」といってさらに強く ちゃんの小さな身体を抱き締めた。 「で、でもそういう問題じゃないよぉ(汗)」 「なんでー?」 「だって、私たち今日初めて話したのに・・//」 「でも俺 ちゃんのこと気に入っちゃったもん♪だいじょーぶい☆」 俺にとってテニスと同じくらい大切なモノが出来た日だった。 初菊夢。菊丸さん大好きなのに一番書けない人。ちょっと中途半端な終わり方。 2003ねん12がつ31にち こっき |