「乾っ♪今から私とゲームしない?」 が、放課後開口一番に俺にかけてきた言葉はこれだった。 「賭け?」 「そう。私が勝ったら乾にはコレを飲んでもらいます。」 そういうと はにこやかに自分の鞄から銀色の水筒を取り出した。 「な、なんだ?それは…」 嫌な予感がする。 「 特製 汁(ドリンク)v昨晩頑張って作ってみました♪」 やはりそうくるのか・・・。 「 …お前受験生なのに何を考えてるんだ…。」 「ん?だって私はエスカレーターであがるもん。成績も充分足りております。」 はそう言って胸をポンと叩いた。 「どうよ。やってみる?乾なら頭いいからゲームで私に負けるなんてありえないもんねぇ。」 「・・・よし、受けてやるよ。」 「ほんと?」 そう言うと は小さくガッツポーズをした。 「…賭けの内容はなんなんだ?」 「早口。」 「は?」 「いい?全部で合わせて二十秒以内にしゃべってね。5、6文あるから。」 6文で30秒ということは…平均一文3・3333333333…秒か。 「私のあとに続いてね♪生麦生米生卵」 すると はものすごいスピードでしゃべり始めた。おいおい。。 「ナマムギナマゴメナマタマゴ」 「蛙ぴょこぴょこ3ぴょこぴょこ合わせてぴょこぴょこ6ぴょこぴょこ」 「カエルピョコピョコミピョコピョコアワセテピョコピョコ…ンピョコピョコ…。」 「…商社の社長が調査書捜査!商社の社長が調査書捜査!商社の社長が調査書捜査!!」 「ショウシャノシャチョウガチョウシャソショウサ!しょうしゃのちゃしょうがしょうしゃそしょさ …しょうしゃのしゃしょがしょしゃしょしょしゃしょしょさ…。」 俺は限界にきていた。 これは 想像以上にきつい。 …海堂のメニューに加えてやろうか…。 「SMAPシングルしがスガシカオ!」 「すまっぷしんぐるすんがすんが…りく…つじゃ…な…い。」 「やったぁ!私の勝ち〜♪」 「ちょっと待て。だいたい自分の領域に持っていくなんてずるいと思うぞ!」 「でも約束は約束よ♪」 「うぐっ…。」 「ふふふ。じゃあ約束通り飲んでいただきますかね。」 はものすごく楽しそうだ。 銀色に光る水筒から持参したらしい桃色の大きなマグカップにその液体を注いだ。 「入れすぎじゃないか?」 「なぁにビビッてるのよ。疲労回復栄養満点だから大丈夫だって。はい♪」 「…。」 にこやかに渡されたマグカップの中には白みがかった茶色い液体がなみなみと注がれてる。 恐い。。青酢並の恐怖だ。。 「……。」 「なに?」 「この薫り、一見美味しそうだが…というかどこかで嗅いだような…。」 「いいからチャッチャと飲みなよ。」 「…うをををおおおおおおおぉぉおぉお!!!!!」 俺は意を決してマグカップに口をつけた。 「…なぁ、 。」 「ん?」 「この甘味とほのかな独特の苦味、そしてかすかな牛乳の薫り、 俺の推測が正しければ…ココアの確立98%なんだが。」 「うん。ココアだよ。正確にはチョコドリにモカ(珈琲)とブルーベリージャム少々入れたケド。」 「…。」 「あ、あと生クリームも。」 「どのあたりが栄養満点 特製 汁(ドリンク)だ…。」 「あら。ココアは栄養満点疲労回復に良いよ。ブルーベリーは目の疲労回復にとても良いし!」 「たしかにそうなんだが…。」 「あ、あと珈琲にはリラックス効果があるしね。生クリームは…おまけだよ(笑)」 「…。」 俺はその言葉にあぜんとした。 だって正直… 「もっと不味いと思ったんでしょ。」 は勝ち誇った顔で俺を見上げた。 「あぁ。名前から推測すると不味そうだったな。」 「うふふ。乾ってば青酢とか味にこだわらず作っちゃうくらいだもんね。 私は味にもこだわりマス☆美味しい?」 「あぁ。」 「そいつは良かったよ。」 「?」 「さてと私は部活に行きますか。乾、 特製 汁(ドリンク)とそのマグあげるよ。 部活頑張ってね。じゃ、明日♪」 はひらひらと手を振りながら教室の扉を開けた。 「おい! !」俺が呼び止めると同時に は振り返りニヤリと不敵な笑みをした。 そして 「いい忘れたけど飲み干すといい事があるよん☆」 とウインクして教室を出ていった。 「?」 俺は不思議に思いながらやや温くなってしまった液体を飲み干した。 すると、マグの底に何か書いてあるのを発見した。 「なんだろう?」 俺はマグを廊下に設置されている水道場に持っていき洗ってみた。 「…!なるほど。」 俺は納得しておもわず笑った。 『Happy Valentine's Day☆Dear sadaharu』 ------------------------------------------------------------------------------ 貞治くんは絶対早口苦手そうだよね。 2004年1月4日 克己 |