「こんな日に勉強なんてもったいないなぁ。」 爽快な青空に 薄い一本の白線 まさに快晴なお散歩日和。 私はプラスチック製の半透明な鞄を片手にコンクリートの並木道を歩いていた。 薄青の鞄は形が中学生の学生鞄のようで最近のお気に入り。 妙に懐かしい気分になるので思わず買ってしまった一品。 大学のキャンパスでもおもいっきりフル活用しているのです。 そんな鞄の中に入ったペンケースがカタカタと音を立てている。 自分の歩く歩調に合わせて鳴る音が嬉しくて足取りも軽くなる。 「久々の休みだというのにさ。」 せっかくの休日 大好きなアイツと過ごせるのはこのうえなく嬉しい…けど 実は休み明けまでに提出のレポートがまだ終わっていないのだった。 その事を昨日電話で伝えたら 「大学の部室まで来てくれたら一緒に考えてあげるよ。」 そう言ってくれたので 私は今、他校に潜入しているわけである。 「さてと…テニスコートはどっちだろう?」 冷静に考えると アイツのテニスを見るのって中学のとき以来。 ちょうど5年ぶりだ。 なんだか秘密の宝物を探しに行くみたいでドキドキする。 一歩歩くたびに鼓動が速くなる。 ドクン ドクン 片思いしてたときの5年前の自分が姿を表す。 いつも練習している姿を教室から眺めていた。 同じクラスになったのが嬉しくて 日直当番一緒になって 話できるようになって 沢山笑いあえるようになって それでも「好き」ってなかなか素直に伝えられなくて。 だけどまっすぐにアイツへ一直線だった自分。 「あ、あった!テニスこ…っうぎゃ!!」 テニスコートを見つけたとたん私は思いっきりなにかにつまずいた。 「…いてて…。」 周りをよくみるとひっくり返った籠と、大量のテニスボールがこぼれ落ちていた。 なぜかボールは赤、青、黄色なんだけど。 「あぁぁあ!!やっちゃった…。」 慌てて這いつくばりながら、籠にボールを拾って入れていく。 すると背後から私よりもひとまわり大きな手が伸びてきた。 「大丈夫か?相変わらずだな。」 「あ…。」 「 が1日10回ドジを踏む確率100パーセント。」 「…そんなに高確率じゃないもん。」 振り返ると明らかにおかしそうに笑っている顔が見えた。 「貞治ってば失礼だよ。」 「いや…三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。」 貞治はそっと私の目尻についた泥を親指で拭った。 「まったく…いつもなにをしでかすか予想不可能で心配だよ。」 「…ふぅん。貞治が予想できないって凄い事だよね?」 「覚えてないかな?俺にとって が一番『理屈じゃない』から。」 「え?」 「 が言ったんだろ。『恋は理屈じゃない』って。」 ドクン 私の中が高鳴る音がした。 「貞治、私…5年経っても貞治に恋しているみたいだよ。今気がついたけど。」 貞治の手のひらが優しく頭をなでてくれる。 「俺は5年間いつも愛しいよ。」 そう言ってそっと私の手をひくと籠を片手に部室のドアを開けた。 「悪いんだが、練習はあと一時間くらいで終わるからベンチで待っててくれるかな?」 「うん。待ってるよ。」 恋は理屈じゃないから 恋の賞味期限はいつまでかなんて そんなの誰にもわかんない 5年経っても50年経っても 同じ気持ちでいれたら素敵だね 確率で表せない関係 ------------------------------------------------------------------------------ 5000hit記念の企画夢。フリーなのでお持ち帰りOK。ちなみに克己はカラコン当て大好きw 2004年5月23日 克己 |