「英二さ、明後日が誕生日ってホント?」

「誰に聞いたの?それ。」


11月26日の放課後。
帰宅しようとした矢先に、同じクラスで、女友達の にそんなコトを聞かれた。


「不二。さっきうちの班の女子が占いの本見ててさ。みんなの誕生日聞いてたから。」

「へぇ〜。不二のヤツよく知ってたな。」

「英二って8月生まれって感じがするケド、意外な感じ。11月28日ねぇ…」

「なになに?もしかして俺になんかくれんの?」

「残念〜。たしか君の誕生日は日曜だからなぁ。なにもあげられないね、きっくまる君。」

「えぇ〜!!!次の日にくれればいいじゃんかっ。」

「う〜ん、私は当日以外は誰かに誕生日プレゼントとかあげない性質なの。じゃね〜、また来しゅ…」



ガシッ
俺は、思わず の腕をしっかりと掴んだ。
なんというか…そんな言い方されるとかなり悔しいじゃんか。
だから俺はある事を提案する事にした。



「それなら、今週の日曜日は俺とデートしよー。」

「なにそれ?私、勉強したいんだけど。仮にも受験生だし。」

「大丈夫だって。一日くらい平気平気。11時に青春台駅前の大きな顔の石集合〜☆」

「え、英二?!勝手に決めるな〜っ!!!」

「それと は小さいから迷子になんないよーにな。」



そういいながら、俺は小柄な の頭に腕をグィっと乗せた。
の背丈は妙に小さい。
おチビといい勝負だと思う。
だからだろうか?
なんだかいつもからかってやりたくなる。



「…誰が小さいって?」

「好き嫌いしてると大きくなれないぞ。」

「してない!!」

「ま、しょうがないって。人間小さいものは小さいんだから。一日や二日で背が伸びるわけでもないし。」

「むぅぅ…。」

「人並みに流されて遅刻するなよ。」

「絶対流されないもんっ!! 」





受験勉強ばっかりで
テニスもあんま出来ないし
遊びにもあんま行けないから
久々に気が合うヤツと外を思いっきり出歩けると思ったら
妙にワクワクして日曜が待ち遠しくなった。
















「到着〜っ!!私、間に合った?」

「お。ちゃんと時間ピッタンコじゃんか。エライエライ。」

俺がそう言って、頭を撫でようとすると、いつもあるはずの場所に の頭はなくて…
なにかがおかしい。

「… ?」

マジ?
俺は驚いた表情で をマジマジとみた。


「英二、おはよ。」

いつも距離のある目線が今日はすごく間近に感じた。
そう文字通り。
なんか変な感じ。


「お前って、実は女の子なんだなぁ〜。 でもブーツにミニスカなんて履くんだ。」

「誰かさんが小さい小さいって言ってましたけど、これで小さいなんていわせないから。」


そう言って俺の服をグッと掴んだ の顔が
いつもよりずっとずっと近くにあって。
いつもの制服姿じゃなくて。
ちゃんと女の子な格好で。

よくよく考えると、 の顔をちゃんと見たのって初めてかもしんない。














「…で、どこ行くの?」

「ん?」

は俺の服を掴んでいた右手をパッと離すとそう質問してきた。
どこ行くの?って…


「英二がデートに誘ったんだから、行き先もちろん考えてあるんだよね?」

「…えっとぉ。」

「考えてるんでしょ?まっさか、受験生の女の子を誘っておいてなぁ〜んにも考えてないなんて事ないよね?」


満面の笑みと共にゴゴゴゴッという音が の背後に聞こえた気がした。
いつもより目線が高い分、やたら怖い。


「…え、えっと…そ、そう!!考えてあるってば!!」

「どこ?」

「わ、わんタッチにゃんタッチ展っ!!!」

「!…わんタッチにゃんタッチ展…?」

しまった…。
なんか威圧された勢いで見当違いな事を言った気が…。

「わんタッチにゃんタッチかぁvv いいね。行こうっか。」

そう言って、 は今度は柔らかく笑った。
こんな表情されたのも初めてで。


コイツってこんなに可愛かったんだ。







コケッ

俺がそう思った瞬間、 がいきなり視界から消えた。



「あ、あれ?! ?!!!!」

「痛っ…だ、大丈夫…」

下のほうから声がして、思わず足元をみると、案の上 は俺の足元にいた。

「お前、もしかして…」

「しょ、しょうがないじゃん!!ブーツ慣れてないんだもん。」

「…ハァ。歩けないのに履いてくるなよな。」

「だ、だって……英二の…視界に入りたかったんだもん。」



はむぅっと怒ったような顔で少し頬を赤らめながら俺を見た。
が地面に座り込んでいるため、上目遣いに俺を見るような状態になってしまう。

うぅ〜。
その顔は反則だって。
その言葉も反則だって。
俺だって男なんだかんな。



「…」

「……。」


「…私がチビで子供っぽいから、英二ってたぶん私のこと女としてみてないんだなって思って…」


はそう呟くと俯いた。


「…どうしたら、私も女の子なんだよってわかってもらえるかなって思ってた。」


え?…。
俺は と目線が合わせたくなって、そっと のそばにしゃがんだ。


「だから目線が近くなったら…少しでも意識してもらえるかなって…ゴメン。」

「なんで謝んの?」

「だって、そんな事考えてたがために、結局英二に迷惑かけちゃっ…」


の言葉を遮るように、俺は の唇を塞いだ。

街は人混みの多い休日の真昼間だし
俺は大事な親 を失ったけど、そんな事かまわない。
この両腕にすっぽり収まってしまう程、小さい女の子を
丸ごと俺のモノにしてしまいたくなってしまったのだから。



「え、英二?!!」

「なんかそこまで想ってもらえると結構嬉しいかも。」

よいっしょっと。
俺は を背中におんぶすると、 が走ってきた道を引き返すように歩きはじめた。



「ちょ、ちょっとどこ行くの?!」

ん家。ブーツ歩けないんだろ。スニーカー取りに行こう。」

「で、でも…」

「もう!無理しなくていいじゃん。俺はもうブーツとか履かなくても の事、ちゃんとみるから。」

「え?それって…。」

「それに、わんタッチにゃんタッチ行くなら、ジーパンにトレーナーのがいいしね。」


俺がそう言って笑いかけると
は俺の背中でおとなしくなった。





君は一面に咲くヒマワリのようで
真っ青な空に浮かんだ小さな雲のようで
俺をいつも元気いっぱいにしてくれる
そんな君はまるで夏そのもの








こそ八月生まれって感じだよな〜。」

「英二…もしかして、私の誕生日知らないとか?」

「え?」

「むぅぅ。ちゃんと覚えてよ!私の誕生日は…」




その日、俺は特別な日の丸印が一つ増えた。
それは君の生まれた日










英二HappyBirthday☆頑張ったけどUPが遅くなってしまいました。
英二は八月のヒマワリ畑と青空が似合う人だなぁと思う。
そして今回は英二語(にゃー)を使わないでみたり。

2004年11月28日   克己