一言でいうならば君は「春」。
なにより俺の守りたい存在。
薄いパステルカラーの似合うお姫様。
そして淡い初めての恋の相手。





「ハルくん?もしかして同じクラスなの?」

も11組なのか?」

「3年ぶりかしら?レンちゃんはいませんけど。」

「…そうだな。」



乾は正直驚いた。
まさかマンモス校の大量にあるクラスの中でわざわざ と同じクラスになるなんて。


(一体どのくらいの確率だろう…)
つい悪い癖でこんな事まで計算してみたくなってしまう。
そして蓮二でも同じ事をするだろうと考え、思わず笑ってしまった。



「ハルくんよろしくね。」

「あぁ。こちらこそ。」

「もぅ…ハルくんは変わらないのね。」

「そうか?」

乾が不思議そうに尋ねると はくすっと笑った。







「―以上解散。」

部活終了直後、乾がふとフェンスに目をやると誰かがこっちをむいてひらひらと手を振っていた。

ん?あれは..。

「ハルくん、一緒に帰りませんか?」

乾が近づくと はにっこりと笑った。

「あぁっ!もしかして乾の彼女?!」

「えぇっ!乾先輩ってばちゃっかりコレいたんッスか?!よっ。ご両人♪」

菊丸がビックリした顔で叫び、桃城が楽しそうに小指を立ててはやしたてた。
だが は動じない様子で「正門のところで待ってるね。」とその場を立ち去ったのだった。









「わざわざ待っててくれたのか?」

乾が尋ねると は乾の横を並んで歩きだした。

「一緒に帰りたかったから。」



がそういって柔らかく微笑むと乾は心苦しくなる。

は…なんで立海に行かなかったんだ?」

「え?」

「好きなんだろ?蓮二の事。」



言いたくなかった言葉。
胸のうちに秘めておくつもりだった言葉。


「そう見えましたの?」

は少し困ったように笑った。


「ああ。その確率は非常に高いと思ってる。…俺といるとき、 は楽しいのか?」

「…ドキドキします。」

「え?」

「私はレンちゃんの事大好きだけど、別の意味でハルくんが大好きです。」

…」

「レンちゃんといると楽しい。でもハルくんといると胸がきゅってなるから。」




気がつくと乾は をしっかりと抱きしめていた。




「…それはつまり… は俺を『恋愛対象として好き』という解釈で…正しいのか?」

「…という解釈で…正しいのだと思います。」

「俺もどうやら が『恋愛対象として好き』らしいのだが…その…どうしたらいい?」

「…え?…えぇ?!…ほ、本当ですか?」

「あぁ。」

「え、えっとハルくん…光栄です//」

「どうでもいいが、その『ハルくん』というのはいい加減やめてもらえないかな?」

「では、ハルくんも『 』と呼ぶのやめてくださいますか?」

「検討しとこう。」







夕焼け空の中で
二人は手をつないで歩いた。
まるで昔のように。





ただ二人の関係はほんの少しだけ変化した。
「春」が「初夏」へと移り変わるように。










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蒼波秋姫さんのキリリクで書かせていただいた淑やかヒロイン。幼馴染っていいなぁ。
2004年4月20日  克己