「あーぁ、降ってきちゃったよ。」 梅雨前線。 六月のお天気は気分屋でちょっと困る。 まるで予測不能なあの人のようだ。 そう思いながら は校舎の玄関の軒下から空を眺めた。 グレイに染まった広い空からは 雨の雫がまるで巨大なシャワーのように校庭やコンクリートの上に降り注いでいた。 「このぶんだとテニス部はたぶん…」 「うん。今日は部活休みになったんだ。」 背後から誰かの声がした。 振り返らなくても誰だかよくわかる。 聞き慣れた声。 聞きなれた口調。 「周助…。」 案の定、 の背後にはいつも通りニコニコした大好きな人の姿があった。 「そっか…テニス出来なくて残念だよね。」 が少し顔を曇らせた。 まるで自分のことのように落ち込んだ表情の を不二はそっと撫でる。 「う〜ん、確かにテニスが出来ないのは残念だけど平気だよ。」 「え?」 不二がにっこりと笑うので は不思議そうに不二をみた。 「雨の音ってすごく綺麗じゃない?それに…」 「それに?」 「 と久しぶりにゆっくり帰れるから雨が降ってくれてちょっと嬉しいんだ。」 「…周助。」 「さてと、一緒に帰ろうか。」 差し伸べられた手に は戸惑う。 「え?あ、雨降ってるから手を繋いで帰ると濡れちゃうよ…。」 「なんで?一緒の傘使えばいいでしょ。それに…」 不二は自分の傘を開くとしっかりと の肩を抱き寄せた。 「こうすれば濡れないよ。」 「…//」 めちゃくちゃ恥ずかしいのに。 こんなカッコいい人に 極上の笑顔でそう言われて逃げられる人がいるのでしょうか? 絶対逃げれません!! 二人はゆっくりと雨の世界を歩いた。 平日の午後は人通りも少なく 水の奏でる音と光の世界になっていた。 「 。虹が出てるよ。」 「え?わぁ。雨が降ってても虹が見えるんだね。周助知ってる?虹のふもとには 宝物があるんだよ。」 がそう言うと不二は少し驚いた顔をしたが、やがておかしそうに笑った。 「くすっ…本当だ。すごいや。」 「え?」 は気がつかなかったけど 僕からみると ちょうど虹のふもとには君がいるようにみえたんだよ。 テニスが出来なくて 内心ちょっぴり悔しかったけど 今日は雨にありがとう。 5000HIT御礼企画フリー夢。 今回のお話は『五月雨(立海編)』と対になっております。 情景が同じでも、人が変われば対応が違う気がして。 2004年6月12日 克己 |