「やだ!やだ!赤也くんっ!絶対痛いってばっ!」 は哀願するように赤也の腕を掴んだ。 だがその必死の訴えを否定するかのように赤也は余裕しゃくしゃくな笑顔で をみている。 「大丈夫だって。俺の事信じろよ。」 赤也はそう言いながら、 の左耳に触れるとそっと頬にキスを落とした。 …赤也くん。 信じてもいいかな? 「それに がしていいって言ったんだぜ。」 甘い雰囲気がほんの一瞬流れたものの、 はすぐに我に返り赤也から身体を離した。 そして、今にも泣きそうな瞳で赤也を上目使いにみつめた。 「ち、血が出るかもしれないじゃん!それに経験者いわくすっごい痛いって聞いたもん!」 「はいはい。俺の誕生日なのに約束破る気かよ?」 「うぅ..」 約束なんかするんじゃなかった。 こんな事なら物をあげたほうがよっぽどマシだったのに。 が悔しそうに赤也をみると赤也はニヤリと笑った。 「 ちゃん、もう抵抗しても逃がさないからな。いい加減観念しな。」 どうしてこんな事になってしまったのだろう。 話は一日前の9月24日に遡る事になる。 「赤也くん。明日、誕生日って本当ですか?」 「あれ? ちゃんなんで知ってんの?」 コートの隅にあるベンチに座っていた赤也は背後から聞こえた声に振り返った。 大好きな声。 振り返ると、赤也にとって一番大切なひとが笑顔で立っていた。 「柳先輩にさっき聞きました。」 「あぁ、そっか。」 赤也がそっけなく答えると、 はちょっと困った様子で赤也をみた。 黒くて綺麗なストレートの髪とセーラーのリボンが風に揺れた。 練習試合中のボールを打ち合う音と歓声だけが聞こえてくる。 黙っていれば可愛いのに。 そう思いながら、赤也は気が付かれないように自分の大切な彼女をみた。 青学と立海。 東京と神奈川。 と赤也はある種の遠距離恋愛だった。 少なくともお互いが中学生という立場では。 そのせいでいつも不安にかられる。 明確な証が欲しかった。 が自分だけのモノだという証が。 「赤也くんは…なにか欲しい物あります?」 「欲しいモノ?」 「ん〜、ゲームソフトとか?テニス用具とか??」 「……。」 「あんまり高い物は駄目っすよ。お金ないし。」 「物は要らないから…俺のお願い聞いてくれる?」 「はい?」 とっさに口から出た言葉は本心だった。 本当は傍にいてくれればそれでいいって言いたかったけど その言葉を口に出来るほど俺はまだ大人じゃない。 そこまで大人になれやしない。 だから…。 「や、やっぱりやめようよ。」 「やだ。」 「こういう事は、ほらあと何年かしてから…せめて高校生になってからさ…。」 「待てない。」 「でもほら先生とかにバレるとやっか…ひゃっ!!」 「もしそれで他の人とかがしたらやだし。」 「そんな…物好きいないってっ!!やだ!!離せ!!」 「仁王先輩とか。上手そうだし。」 「仁王先輩に頼…むわ…けないでしょ!!…あぅ…つ…。」 「ん〜、そろそろ平気?」 「…あ…うぅ…へ…平気く…ない……やだ…って…ば…。」 バッチン。 部屋中に金属音が響き渡ったような気がした。 一瞬何が起きたかわからなかったが 感覚が戻ってくると は全身に電気が走ったかのような、背筋の毛が逆立っているような感じがした。 「…痛っ!!!!冷っ!!熱っ!!!痛いっ!!」 「あ、やっぱ痛い?」 「冷やせばいたくないって嘘じゃんっ!!!赤也くんの嘘つきっ!!」 「冷やさないともっと痛いらしいぜ。はい。」 赤也は の左耳にアイスノンを押しあてた。 熱が集中しているため、気休めとはいえアイスノンのひんやりとした感覚が心地良い。 ぷぃっと膨れっ面で怒る を、赤也はちょっと嬉しそうに眺めた。 「赤也くん!なに笑ってんの!!」 「ん?可愛いなと思っただけ。」 「な、何それ?だいたい今日あける必要なかったんじゃないの!!しかもなんで私がさ…」 「あけたいって言ってたじゃん。」 「別に今あけたかったんじゃないやい。」 「…他の男にあけさせたくなかったから。 の身体に傷作られたらやだし。」 「自分はいいのかよ!!」 「だって は俺のモノ。」 「い、いつからだよ!!そんな事決まったの!!」 「さっき。だって印付けたじゃん。 が俺のモノって証。」 そういうと赤也は満足げに の左耳をみつめる。 淡く青いサファイア色のピアスがキラキラと小さく光っている。 は赤面しながら、しばらく俯いて何事か考えているようであった。 やがて面を上げると赤也の目をみつめて言葉を発した。 「…赤也くん。」 「何?」 「…お誕生日おめでとう。」 「あぁ。ありが…」 赤也は の予想外な行動に言葉を遮られた。 重ねられた唇。 今まで、 からしてきた事など皆無だったため 赤也はビックリした表情で をみた。 「なんか、プレゼントするはずが貰ってしまったので。」 恥ずかしそうにそっぽを向く が赤也は愛しくて。 赤也は を抱きしめた。 「来年は が欲しいかも。」 「…それは来年検討します。」 来年も傍にいるのが君でありますように。 赤也お誕生日おめでとう!!! 最後まで読んで『ピアス』の事だという事を念頭に置いて もう一度読むと全然違った印象を受けると思いますよ。 2004年9月25日 克己 |