「んのヤロォっ!こんなの出来るわけねぇーよっ!」

「…あ、赤也くん。」


不機嫌そうな彼氏の顔を は不安げにおずおずとみた。


「あ〜、マジやってらんねぇ。…あ、 ちゃんもやる?」

「…やらない。赤也くんに無理なモノが私に出来るワケないじゃん。」

「そう?おもしろいッスけどねぇ。」


軽快にテレビから流れる常夏の海らしいBGM。
テレビ画面では退屈そうにコントローラーの指令待ちをしているキャラクターが
よくわからない行動をとっている。

そう。
切原赤也は只今アクションゲームの真っ最中であった。

「だいたい赤也くん家来てまで、なんでゲームを…」

ポロっと出てしまった本音。
ちょっとマズったかなと思いつつ、赤也をそっとみると。
意外にも笑っていた。

だがしかしこの笑みは…。


「へぇ〜。じゃあゲームやめて別の事でもする?」

「ほ、他の事って…」



が後ずさろうとすると赤也は の身体を引き寄せた。



止められる呼吸と
早められる鼓動。




頭がスパークしそうなほど強く口づけされて
抵抗しようとしていた力が緩んだ。








角度を変えて何度も求められ
呼吸が出来ない。







唇が離れたとき は涙目で赤也をみた。


「こーゆー事の続き。」


さらりと涼しい顔でこんな事言われると
こっぱずかしくなる。



「ゲ、ゲームやりますっ!!やらせていただきます!!」

は赤也を押しのけて
ゲームのコントローラーを握ると
スタートボタンを押した。




「…ちぇ。つまんねーの。」

そういいながら赤也は立ち上がると部屋のドアを開けた。

「赤也くん?」

「今ジュースでも持ってきてやるよ。」

「炭酸以外ねー。」

「はいはい。」







そういって赤也は部屋を出ていったのだが…







ちゃーん?これで良かった?」

「あ…赤也くん…どうしよう…?」

「ん?なんかあった?」

「…クリア…しちゃった…あ、あははは…。」


TV画面では
キャラクターがVサインをし
『SAVEしますか?』という画面になっている。



は思わず苦笑いしながら赤也をみたが、予想に反して今回赤也は笑っていない。
無言で の横に座ると


「…ふぅーん。良かったッスね。」


俯いたままボソッとそう呟いた。


こ、恐い。。
は心底そう思ったが
まるで蛇に睨まれた蛙のようにその場を動けない。

「……。」

「あ、赤也くん?もしもし?」

「………。」

「な、なんとか言ってく…」


の言葉は赤也の手のひらによって遮られた。
口を左手で押さえられた状態でそのまま押し倒される。



「う…うぐぐ…うぐ…」

「…ゲーム…」

「…う?」

「…クリアしたんなら…さっきの続き……してもいいんだよな!」

「…!はううう!!うぐぐっ!」




目、目が充血してるぅぅぅぅっ!!!
そう叫びたいものの、口をしっかりと押さえられているため
なにも言葉にできない。
とにかく赤目モードの赤也に逆らうのは危険だ。
それだけは回らない頭で察知したため
は全身が固まった。



「…んっ。」




やだ…。
涙目になる瞳。
首筋を舌でなぞられて は身体を仰け反らせる。








「――…キモチイイ?」




ぷちっ。



赤也の右手が のシャツのボタンを外す音が耳に聞こえる。
シャツを肩までずり降ろされ
鎖骨や胸元に、舌を這われ、キスされて
は声にならない声を発する。




やがて
赤也の手のひらが離れ、舌が の唇をそっと舐めた。


「…っ。」


重なり合う唇。
舌が絡まり合い、深い口づけとなる。
唾液が飲み干せなくなるが
それでも赤也は唇を離してはくれない。


「…んんっ……んんん…」



思わず


は右足でおもいっきり腹を蹴っ飛ばした。




ドゴッ!!!




「…いでっっ!!!」


さすがにしっかりとミゾオチに入ったためか
赤也は腹を押さえてうずくまった。



「赤…也……いい加減にしろっ!!」


はぷいっと顔をそらすと上半身を起こした。


ちゃん…今の…マジで痛かった…。」

「自業自得ですっ!!充血しないでくださいっ!!!」

「…充血?」


赤也の頭に?マークが飛んでいる。
これって…まさか…。


「…覚えてないとか…いいませんよね?」

「……あ、あんまり。なんで俺蹴られたんだよ?」

「…赤也の大ボケっ!!!!」


そう叫びながら
が赤也にグーパンチを喰らわせたのはいうまでもない。




―――数十分後…。






「ご、ゴメン!マジ悪かったって。」

「プリッ。」

「に、仁王先輩の真似して怒んな!」

「…プリッ。」

「もう の前では赤目になんないから(たぶん)」

「プリッ?」

「もう許してくれよ。」


そういうと赤也はそっと の頬に小さくキスをした。


「…許す//」

「サンキュー。愛して…あぁあぁ!!!!」

「な、何?」

…あれからまだスキって言ってくれてないよな?」

「あ、あははははは…」


「言ってよ。」


そっと耳元で囁かれて
の顔面は真っ赤に紅潮した。


「…今更言わなくてもわかってるっしょ?…赤也くんの事…大好きだよ。」

「ありがと。俺も愛してる。」



こうしてLOVE×2におさまった二人でしたが

ゲームのSAVEはどうなったのやら
それは誰にもわからないのであった。











葵さんのキリリクで書かせていただいた『赤也夢』。
赤目好き〜。

2004年7月8日      克己